INTERVIEW

職人図鑑 #17 大塚裕貴(34歳)

新たな夢にわくわくしているところです

Otsuka Hiroki(age34)

Otsuka Hiroki(age34)

株式会社ミヤケン工事部係長 1984年8月15日、群馬県生まれ。ビジネス系の専門学校を卒業後、学習教材販売会社に就職。3か月で退社、職人の道を志し、2006年8月にミヤケンに転職。趣味はゴルフ、ダンス

Chapter 1

面接で「職人は無理だ」と言われたんですが……

Chapter 1 面接で「職人は無理だ」と言われたんですが……

 もともと、職人になりたかったんです。ただ、専門学校で勉強したパソコンを生かそうと、学習教材販売会社に就職しました。国家試験の情報処理技術者資格も取っていたので、親も普通の会社に入ってほしかったようでしたからね。

 ただ、入社して配属されたのは営業職。ノルマはないと聞いていたんですが、1か月ほどしたら、やっぱりノルマがあって……電話でアポをとってから、相手宅を訪問してセールスをするという仕事だったんですが、電話でアポをとるだけでも、たいへんだったんです。自分には向いていないと判断して、3か月ほどで辞めました。

 それで、職人の仕事を探していたんですが、求人誌でいまの会社の求人広告を見て、応募することにしました。とくに塗装への興味があったわけではなく、とにかく手に職をつけられる仕事に就きたかったんです。ただ、面接でいきなり「お前みたいなのは職人は無理だ」と言われました。

 色白なうえ、その頃は身体が細くて、男らしくないなんてよく言われたりしていましたから、そういう見た目や雰囲気とかで判断されたんだと思います。でも、「どうしてもやりたいんです!」と食い下がったところ、無事、採用されたんです。

Chapter 2

「THE職人」という厳しい雰囲気

Chapter 2 「THE職人」という厳しい雰囲気

 仕事を始めてみて、前の職場より、全然、自分に向いていると思いました。ただ、きつかったのは……現在は群馬県内での仕事が多いんですが、入社した頃は、東京とか県外の仕事が結構、あったんです。通えない距離ではないので、早朝5時起きしなければならないこともあって、慣れないうちはきつかったですね。

 あと、職場の人間関係というか……最初、何も仕事のことがわからなかったんですが、「何でも聞いてくれ」と言われていたので、聞いてみると、怒られてしまうという(笑)。

 正直、はやく塗りの仕事もやりたかったのに、下働きばかりだったので、仕事がイヤになってしまった時期もありました。

 実際、当時の職場は「THE職人」という厳しい雰囲気がいまより強かったので、若い人たちは職場になかなか定着しなかったんです。仕方がないから、先輩職人たちの仕事を見て、自分で考えて、何とか仕事をこなしていました。

 養生ひとつにしても、最初に教わったやり方だけでなく、職人によって、速くできたり、きれいにできたり、いろいろな方法があります。どうすればいいのか考えて、試してみることで、スキルアップすることができる。そうこうしているうちに、だんだん責任ある仕事を任されるようになり、やり甲斐を感じるようになっていきました。

Chapter 3

どうやって、若い人たちを育てるか?

 この仕事をしていて、いちばん嬉しいのは「きれいにしてくれて、ありがとう」とか、お客様に感謝していただけることです。

 ですから、工事後のお客様からのアンケートは気になります。最初の頃は最善を尽くしたつもりだったのに、至らないところがあったんだと落ち込むこともありました。ただ、自分では気づけなかったことを指摘されることは、反省材料にもなりますし、次の仕事への励みにもなりますからね。

 お客様に喜んでもらうために、心がけているのは、お客様にはさまざまな要望がありますが、言われる前にそれを汲み取ることです。現場でのお客様の目の動き、言葉の端々から、何となくわかるような気がするようになってきているんですよ。勘違いなのかもしれませんが……(笑)。

 7年前、入社5年目で工事部職長になりました。うちの会社での職長は親方みたいな役割を持つんですが、仕事を教える側の立場になって、いろいろ考えるところがありました。自分が入社した頃と違って、一つの作業を完璧にこなせるまで次の段階に行けなかったんですが、いまは同時進行でいろいろな作業を教えるようになっています。

 下働きばかりだと、若い人が腐る気持ちもわかる。また、仕事は教わるものではなく、見て盗むものだというスタンスだと、若い人たちはついてこられない。ただ、仕事には厳しさが必要です。それに、職人になりたかったのも、「THE職人」の厳しい雰囲気が好きだったからですし、自分自身、怒られたことで成長できた部分も多いと感じています。とにかく、どうやって、若い人たちを育てるかを考えるようにしています。

Chapter 3 どうやって、若い人たちを育てるか?
Chapter 3 どうやって、若い人たちを育てるか?
Chapter 3 どうやって、若い人たちを育てるか?

株式会社ミヤケンでは毎日、顧客と「塗り替え交換日記」を交わしている

Chapter 4

来年、新たなチャレンジに挑んでいくつもりです

 いまは5人の職長のなかで、リーダーとして、工事部全体をまとめる立場にいます。たいへんですけれど、会社の仕事がうまく回せるかどうかは、自分の働き次第なところがあります。それに、社長からは独立のためには、会社が大きくなって、まとまり欠けるようになった工事部に一本、芯を通すようにも言われているんです。

 職人を志したのは、将来、独立したいという気持ちもあったからです。入社面接のときに「職人は無理だ」と社長に言われながらも、「将来は独立したいんです」と言っていたくらいだったんでけどね(笑)。

 でも、今年の夏、社長から新たなプロジェクトを始めることを提案されたんです。それは、塗装職人の養成学校をつくることです。

 自分としては、塗装の現場仕事が好きなんですが、後進を育てていくことの必要性を強く感じていました。独立して、勝負してみたい気持ちもあったんですが、社長は業界のために大きなことにチャレンジしようとしている。

 その心意気、男気に応えなければならないという。どういうかたちになるかはまだはっきりとはしていませんが、来年、塗装学校を開校することは決まっています。そのことは、自分の新たな夢になりました。

 いまは現場の仕事や工事部に芯を通すというミッションをこなしながら、開校のための準備、勉強を進めているところです。もしかしたら、来年は職人としての仕事はできなくなって、教えることだけになるのかもしれません。でも、それはそれで、意義があることだと考えています。

 来年、自分は35歳になります。仕事では新たな夢に挑戦することになりますが、交際中の彼女と結婚しようと思っています——これまでの人生でいちばんの勝負の年になりますので、わくわくしているところです。

Chapter 4 来年、新たなチャレンジに挑んでいくつもりです
Chapter 4 来年、新たなチャレンジに挑んでいくつもりです

掲載日:2018/11/14

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