INTERVIEW

職人図鑑 # 44 上林 勇介(32歳)

知らず識らずのうち、塗装職人三代目という意識が、自分のなかにありました

Kamibayashi Yuhsuke(age32)

Kamibayashi Yuhsuke(age32)

有限会社上林塗装所属。1988年9月26日、埼玉県生まれ。秩父農工科学高等学校を経て、足利工業大学工学部建築学科卒業。建築会社に1年勤務後、上林塗装に入社。2年前に結婚、今年1月に長男が誕生。1級塗装技能士、1級建築施工管理技士、宅地建物取引士、ほかの資格を持つ

Chapter 1

高校、大学の進学では少しでも塗装に近い学科に行きたいと考えました

 小さい頃から、父と祖父が塗装職人として働く姿を見てきました。塗料や塗装道具も身近にあって、何となく、自分はこの職業に就くものだという気持ちになっていたんです。そういうふうに考えるようになったのはいつだったのか、はっきりと覚えていません。ただ、高校、大学に進学するときには、塗装と少しでも近い学科に進もうと考えました。塗装が学べる学科のある高校や大学は、全国でも少なく、関東近辺にはないんですよ。

 高校は森林科学科に進みました。森林科学科は埼玉の高校では唯一、全国でも10数校にしか設置されていない学科。測量、土木、環境、森林、林産加工、情報処理などを学んでいきます。塗装は木材に施すことも多いですから、勉強になると思ったんです。

 大学は工学部建築学コース。建築と塗装は、切っても切れない関係ですからね。建築のことがわかっていれば、塗装の仕事にも役立つに違いないと思いました。

 大学卒業後、直接、上林塗装に入らなかったんです。建築にも興味が湧いてきて、現場での経験もしてみたいと、大宮市の建築会社に入社しました。それなりに楽しかったんですが、仕事は現場監督がメイン。勉強にはなりましたが、やがて、自分がいま、やりたいことは職人的な仕事なんだということが、わかってきたんです。それで、1年ほど、その会社で働いた後、上林塗装に入れてもらうことにしました。

Chapter 1 高校、大学の進学では少しでも塗装に近い学科に行きたいと考えました Chapter 1 高校、大学の進学では少しでも塗装に近い学科に行きたいと考えました

Chapter 2

ちょっと回り道をしてみて、やっぱり、自分はこの仕事がしたいんだと改めて気づきました

 父や祖父といっしょに働くことになって、思ったことは……やっぱり、父や祖父は職人としてすごいということです。養生にしても、刷毛の使い方にしても、塗料に関する知識にしても、自分と全然、違う。レベルの差を目の当たりにして、イチから修行していかなければならないと痛感しました。

 学生時代から、仕事の手伝いをしていましたけれど、社会人になって働いてみると、やっぱり、違うところが見えてくる。そういう意味では、建築会社で働いたこともいい経験になったのかと思います。

 身近に目標となる存在がいることは幸せなことだと感じました。そして、何より、自分にはこの仕事が向いていると思ったんです。また、職人としてのスキルを身につけていく楽しさ、塗装によって建物が生まれ変わっていく喜び、お客様たちが喜んでくださるこの仕事の達成感を、ますます感じるようになってきました。

 2年前に1級塗装技能士を取得。親父はとっくの昔から、先輩の隅倉悠さんもすでに持っていて、弟の奎介も翌年に取ったんです。それで、上林塗装のメインの職人は全員、1級塗装技能士。このことが父はすごく嬉しかったみたいですね。

 それから、会社のユニフォームの胸に「1級塗装技能士」という文字とマークを入れるようになったんです。最初はちょっと、気恥ずかしかったんですが、ユニフォームの背中にある「塗志」という言葉も含めて、この会社で塗装職人をしている矜持も感じるところがあります。また、祖父、親父と受け継がれてきていることを、自分も引き受けていこうという気持ちも強くなりました。

Chapter 2 ちょっと回り道をしてみて、やっぱり、自分はこの仕事がしたいんだと改めて気づきました

Chapter 3

結婚、長男の誕生で、この仕事にかける思いも強くなっています

 2年前、自分の人生にも、結婚という大きなターニングポイントがありました。妻とは7年前、AAA(トリプル・エー)のライブで知り合ったんですが、たまたま、いっしょに行った友人の親戚だったんです。知り合って1年して交際を始めたんですが、最初から結婚を意識していたような気がします。音楽の趣味も近いですし、自分の仕事、やりたいことに理解がありましたからね。自然と、結婚という話になっていきました。

 いまは両親と別居していますが、近い将来、同居することになると思います。上林塗装の経理などの事務は、母が担当しているんですが、将来、妻が手伝うことも考えています。

 惚気けるようですが、いい奥さん、いいパートナーと出会えた、と(笑)。

 今年1月、長男の未弦(みつる)が生まれました。結婚したときも同じですが、気が引き締まる思いがしました。父は「四代目ができた」と喜んでいましたが、無理強いはしたくありませんし、本人次第ですからね。ただ、正直、跡を継いでもらいたいという気持ちはあるんです。それには……父や祖父を見ていて、自分がそう感じたような仕事を自分もしていくことです。胸を張って、一人前、一流の塗装職人としての仕事をしていくことだと考えています。

Chapter 3 結婚、長男の誕生で、この仕事にかける思いも強くなっています Chapter 3 結婚、長男の誕生で、この仕事にかける思いも強くなっています

Chapter 4

仕事の幅を広げていくためにさまざまな資格を取得していきたい

 資格は「1級塗装技能士」のほかに、「一級建築施工管理技士」「宅地建物取引士」「雨漏り診断士」「愛犬家住宅コーディネーター」「ドローン操縦士回転翼3級(国土交通省DPA)」「ITCサーモグラファー国際レベル1」「外装劣化診断士」を持っています。資格マニアではないんですけどね(笑)。仕事に必要だと思ったり、自分の興味があるものを取得していっているだけなんです。とくに、「宅地建物取引士」は専門外で難易度が高く、仕事の合間の勉強はたいへんでした。

 いまチャレンジしようと考えているのは、「ITCサーモグラファー国際レベル2」。赤外線サーモグラフィーカメラで雨漏りの原因調査、断熱状態調査、外壁診断をするための資格ですが、国際的にも通用する資格なんです。レベル1持っていますが、より高度な調査、診断ができるので、お客様のために頑張りたいところです。

 弟もほぼ同じ資格を持っています。同じ環境で育ちましたか
ら、自分と似たような意識を持っているんだと思います。

 弟は4歳下。同じ現場で働くことも多いですし、仲はいいんですよ。年齢が離れすぎず、近すぎないため、いい距離感を取れているんでしょうね。父は58歳ですから、まだ10年、20年は現役で頑張るだろうし、頑張ってほしいんですけれど、私と弟の代になったら……と、考えることもあります。私は経営的な仕事を担当、弟は現場を統括する──きちんと話し合っていませんが、そんな同じ未来図を描いていると感じています。まだまだ、先のことなんですが……。

Chapter 4 仕事の幅を広げていくためにさまざまな資格を取得していきたい
Chapter 4 生後8か月の長男がこの職業に就きたいと思ってくれる── そんな仕事を、自分もしていきたいと思っています
※仕事現場では常にマスクを着用していますが、写真のためにマスクを外して、適切なソーシャル・ディスタンスを取って、撮影しています。

掲載日:2020/9/17

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