INTERVIEW

職人図鑑 #35 櫻本真一(35歳)

仙台を拠点にして、新しい日本の塗装文化をつくっていきたい!

Shinichi Sakuramoto(age37)

Shinichi Sakuramoto(age37)

株式会社櫻一style代表取締役 1982年9月7日、仙台市生まれ。櫻本塗装店を経営する父のもと、12歳から現場経験を積み、高校卒業後、同塗装店に入社。エイジングペイント、モルタル造形など、特殊塗装の技術を独学で身に付けて、「日本の壁に色彩と表情を」をテーマに「櫻一style」ブランドでの仕事を進める。2018年9月、株式会社櫻一styleを設立。趣味はキャンプ、小学6年生の長男、小学3年生の長女、1歳8か月の次女がいる。愛用のマスキングテープは「正宗」「No.SB-246S

Chapter 1

会社を継ぐつもりはなかったが、塗装の仕事をやりたいと思った

 親父が塗装店を経営していたので、生まれてから塗装現場は身近なものだったんです。うちの会社は家具塗装がメインでしたが、子供の頃から自然と手伝いをしていました。最初に現場に立ったのは12歳、中学1年生のときでした。もちろん、アルバイトでしたが、夏休みなどに働かせてもらって、だんだん仕事を覚えていくことになりました。

 高校卒業のとき、本当は父の会社でなく、他のところに就職が決まっていたんです。会社を継ぐつもりはなかったんですが、塗装の仕事に就こうと思って、別なところで修業をしようと思っていたんです。本格的にこの仕事を初めてみて、もし自分に合わなかったら、他の仕事に就こうという気持ちもありましたからね。ところが……たまたま、親父の会社の仕事が立て込んでいて、それを手伝っているうち、正式に入社することになりました(笑)。

 櫻本塗装店では、家具や内装などの一般塗装が主な仕事だったんですが、店舗の内装塗装の仕事が多かった。それで、お客様からいろんな注文を受けていたんですが、どういうふうにかたちにしていけばいいのか……考えていくうちに、従来の技術では表現できないものをつくりたくなってきました。それで、エイジングペイント、モルタル造形などの技術を、独学で身に付けていったんです。

 大きかったのは、その頃、15年ほど前、モルタルの上に吹き付ける塗り壁材、ジョリパットが店舗内装で流行り始めていたことです。塗装というより、漆喰や珪藻土に近い作業になるので、左官屋さんの領域なんですが、自分でもやってみようと思った。そうしたら意外とうまくできたので……やがて、刷毛やローラーだけでなく、左官のコテも使って、特殊なモルタルや塗料を試していくようになりました。

Chapter 1 会社を継ぐつもりはなかったが、塗装の仕事をやりたいと思った Chapter 1 会社を継ぐつもりはなかったが、塗装の仕事をやりたいと思った

Chapter 2

モルタル造形に刺激を受けて、特殊塗装を志すようになった

 もうひとつ、大きなきっかけは……10数年前、アメリカ・ラスベガスに旅行をしたとき、ホテルの壁を見て、衝撃を受けたことです。壁は大理石そのものに見えるけれど、大理石に見えるように加工、塗装していた。壁や床の表面にモルタルを塗って、固まるまでにコテやナイフ、ブラシでかたちを整えて、年数が経ったように塗装する。そのことで、大理石や石畳、古木の風合いを再現する――この技術、技法はアメリカ発祥の「モルタル造形」と呼ばれるものだとわかったんです。

 その後、モルタル造形の技術を本格的に身に付けようと独学を続けましたが、材料や塗料、道具を求めて、アメリカに学びに行っています。ただ、基本は独学ですので、自分の材料の使い方をすることはアメリカのスタンダードではなかったりするんですけれどね(笑)。でも、古いレンガ積みや石畳、古木の柱などの欧米のアンティークな街並み、風景はモルタル造形のモデルになるものですし、実物のものも数多くあります。

 ですから、海外旅行をしながら、海外のそういう街並みや風景を目の当たりにすることも、大きな刺激になる。モルタル造形、エイジングペイントでどういうふうに再現するかを考えながら、街並みや風景を眺めています。

 やがて、自分なりに納得できる仕事ができるようになって、技法を10年ほどから、「櫻一style」と名前をつけて、名刺もつくり、営業していったんです。「櫻一」は自分の名前である「櫻(本真)一」に因んでいて、自分のスタイルへこだわりたいということです。

「櫻一style」で10年近く、有限会社櫻本塗装店のなかでやっていました。しかし、そろそろ、父の会社とは別組織にしたほうがいいと考えて、2018年9月に株式会社櫻一styleを設立したんです。

Chapter 2 モルタル造形に刺激を受けて、特殊塗装を志すようになった Chapter 2 モルタル造形に刺激を受けて、特殊塗装を志すようになった

Chapter 3

自分が持つ技術、技法をもとに、新しい塗装文化をつくっていきたい

 親父の会社から独立したのは、もうひとつ、理由があります。モルタル造形、エイジングペイントは内装や家具にも向いていますが、外壁でも大きな効果を生みます。外壁を海外の街並み、風景のような加工、塗装をすれば、印象をそれまでとガラッと変えることができる。そして、普通、リノベーションというと、内装を中心に考えるんですが、うちの技術で外壁リノベーションを大きく変えられる――そこで、特殊塗料の仕入れ先の建材屋さんに相談したところ、いっしょに日本で外壁リノベーションを広めていこうという話になりました。

 そこで、2年前から「外壁リノベ専門店」というWebサイトを開設。全国の塗装店、塗装会社の登録を募集して、ノウハウを広めているところです。現在、年に4回、東京を中心に講習会を開催。自分が旅した街並み、風景をモデルにしたニューヨーク、ロサンゼルス、イギリス、フランスという外壁リノベーションの4つのスタイルがありますが、日本全国で施工されるようになっているところです――この「外壁リノベ専門店」というプロジェクトのために、櫻本塗装店から独立したほうがいいと考えたんです。

「外壁リノベ専門店」は全国展開しようとしているんですが……仙台から、拠点を移ることは考えていません。それは、震災が大きいんです。自分自身、震災をきっかけに吹っ切れるところがあった――明日、何があるかわからないのだから、本当にやりたいことをやっていかなけらばならない。そのためには、自分の足下をきちんとしておかなければならない、と。

 また、株式会社櫻一styleは、特殊塗装、外壁リノベに特化しているわけではありません。塗装という仕事が本丸ですから、従来とおりの内装や家具、外壁の塗装もやっています。外壁から内装まで、リノベ、新築の仕事もあれば、部分的に請け負うこともあります。専門化、特化することも大切なことだと思いますが、自分は塗装職人であることが基本だと思っているからです。

Chapter 3 自分が持つ技術、技法をもとに、新しい塗装文化をつくっていきたい
Chapter 4 福岡の空にジェット機の轟音が響き渡る。よし!やるぞ。曇り空を養生するように職人はテープをぐいっと引いた

掲載日:2020/02/06

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