INTERVIEW

職人図鑑 #32 山添正信(51歳)

手に職があるという自信があったから、人生の転機、福岡移住を即決できた

Yamazoe Masanobu(age51)

Yamazoe Masanobu(age51)

株式会社福岡ペイントArt代表取締役社長 1968年7月13日、京都府舞鶴市生まれ。17歳で塗装職人になり、24歳で妻の故郷、福岡県に移住。25歳の’93年7月に屋号・山添塗装を掲げて独立、’18年2月に現社名で法人化した。現在、一般社団法人雨漏り鑑定士協会などの理事も務める https://www.fukuoka-paintart.co.jp/

Chapter 1

この仕事を始めたひとつのきっかけは、とにかく、働くことが好きだったことです

 17歳で塗装職人になりました。中学時代から新聞配達などアルバイトを始めて、自分は仕事でお金を稼ぐことが好きなんだと思ったんです。ですから、中卒で職人として働きたかったんですが、高校へ行ってほしいと両親に強く言われて……折衷案として、とりあえず、公立高校に進学するけれど、すぐに中退してもいいということになったんです。それで、高校1年の夏休み前に中退して、働き始めました。

 最初、桐箱工場や建築現場で働き始めたんですが、どこでもひとつの工程を任されるだけだった。自分としては、ひとつのものを一人でつくりあげる職人的な仕事をしたかったんです。

そんななか、たまたま友だちのお兄さんが塗装店で働いていて紹介されて……この仕事は自分に向いているし、おもしろいと思ったんです。

 もともと職人になりたかったんですけれど、当時は中途半端なところがあったのかもしれません。親方には怒られてばかりだったし、いま考えると、仕事への取り組み方も一途ではなかった気もします。

Chapter 1 この仕事を始めたひとつのきっかけは、とにかく、働くことが好きだったことです Chapter 1 この仕事を始めたひとつのきっかけは、とにかく、働くことが好きだったことです
福岡移住から10年、2002年に自宅兼事務所を購入。昨年、大野城市に倉庫をつくり、事務所にショールームを開設した

Chapter 2

嫁との出逢いで自分の人生の方向が決まったと思っています

 でも、塗装職人になって2年が過ぎ、そういう自分を変えようと決めるできごとがあったんです――いまの嫁、有子と出逢ったことです。19歳で恋に落ちて、長男ができたこともあって、20歳のクリスマスに結婚しました。嫁も看護師として働いていたんですが、はやく一人前になりたいと、親方や先輩職人の技術をいかにして盗むか、血眼になっていました。

 ようやく塗装職人として一人前になれそうだという自信がついてきた頃、嫁が双子を妊娠したことがわかりました。いきなり二人も家族が増えることもプレッシャーでしたけれど、嫁が妊娠中毒症で体調を崩して、とりあえず、福岡県へ里帰りしたんです。

 とうぶん別居生活をしようかという話にもなったんですが……塗装職人の自分は、日本全国どこへ行っても仕事ができる。いっそ、福岡へ移住してしまおう、と。それが24歳のときでしたから、人生の半分以上を福岡で過ごしていますが、もはや京都よりも居心地がいいくらいです(笑)。

Chapter 2 嫁との出逢いで自分の人生の方向が決まったと思っています
妻の有子さんは同い年。5人の孫がいる

Chapter 3

昨年2月に法人化して、心機一転、新しい挑戦をしていくつもりです

 幸い、嫁の実家近くの塗装店で働くことができました。それで、1年経って、やっと土地勘がついてきた頃、下請け仕事を回すので、独立しないかと声をかけられたんです。当時はまだバブルのなごりもありましたし、いい機会だと思って、独立することにしたんです。

 独立してから、嫁は看護師の仕事をやめて、自分の仕事を手伝ってくれるようになりました。経理や電話の応対など総務的な仕事だけでなく、施工管理技士、劣化診断士、外壁診断士などの資格をいくつも取って、右腕として働いていてくれます。

 それから約四半世紀、山添塗装という屋号で仕事をしてきたんですが、昨年2月に株式会社福岡ペイントartとして法人化しました。

法人化したきっかけは――業界団体などの役員、理事に就くようになってきたので、個人事業主では体面がよくなかったからです(笑)。社名は山添塗装のままにしようと思っていたんですが、お客様から依頼されることが多くなってきていましたので、新しい社名で心機一転、気分一新を図ろうという。由来は、第二の故郷「福岡」で塗装「ペイント」の仕事をしていこうという。「Art」には「芸術」「美術」以外にも「技巧」「技」「熟練」「腕」「専門技術」という意味がありますので、自分たちの仕事のなかで「Art」を大切にしていこうという思いを込めました。

Chapter 3 昨年2月に法人化して、心機一転、新しい挑戦をしていくつもりです Chapter 3 昨年2月に法人化して、心機一転、新しい挑戦をしていくつもりです
愛用する赤外線サーモグラフィカメラ「FLIR T62」。200万円以上もする。熊本地震では公共施設の劣化診断、危険個所の特定で活用された。下は「赤外線調査サーモグラファLEVEL 2(ITC 認定国際ライセンス)」
Chapter 3 昨年2月に法人化して、心機一転、新しい挑戦をしていくつもりです

Chapter 4

営業は苦手なんですが、技術でアピールできるようになりました

 いまは嫁とあわせて24種類の資格を持っているんですが、別に資格コレクターではなくて、仕事に役立つ技術を身につける資格を取っていった結果なんです。一級塗装技能士は2001年に取ったんですが、他の多くはここ6~7年に取得したものです。資格を取るようになったきっかけは、塗魂ペインターズ、雨漏り119などに参加したこと。一流の職人たちが一流の技術、資格を持っていることを目の当たりにして、刺激を受けたからです。

 たとえば「赤外線調査サーモグラファLEVEL2(ITC認定国際ライセンス)」でしたら、雨漏り119、雨漏り鑑定士協会に入って、雨漏りの赤外線調査を知ったんです。高性能赤外線カメラを使うと、壁や天井のなかの様子が可視化されて、水分が溜まったところが青色に写ったりして、雨漏りや屋根・外壁劣化のようすがわかる。ただ、例外もあるので、分析、診断にはスキルが必要になるんですが、それを保証するのがこの資格なんですよ。

 さらに、斜面になっている屋根など、足場を組まないと撮影できない場所もドローンを使えば、撮影できることがわかって……ドローン・パイロットの資格も取ろうというように、結果として、次々と資格を取っていくことになったという(笑)。

 口下手ですので、営業はもともと苦手なんです。ですから、独立してから下請け仕事をメインにしてきたんですが、ここ数年でお客様から直接、いただく仕事が増えてきました。うちでは施工後、壁や屋根をくまなく4K動画で撮影する「ドローン検査」を無料で行っているんですが、そういうことも評判になっているようです――お客様のために、さらなる新しい技術を身につけていきたいと考えています。また、これからは、次の世代に自分たちが持っている技術、スキルを伝えていきたいと思っているところです。

Chapter 4 営業は苦手なんですが、技術でアピールできるようになりました Chapter 4 営業は苦手なんですが、技術でアピールできるようになりました
Chapter 4 「段取り七分の塗り三分」――職人に成り立ての頃、教わった言葉ですが、座右の銘になっています
山添社長はドローン技術と建設の知識や経験を活かして災害時の救急支援をしていく一般社団法人災害対策建設協会JAPAN47 の理事も務めている

掲載日:2019/10/15

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